西部戦線異状なし ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT / 1930 / USA
STORY
映画史に残る反戦映画の名作、「西部戦線異状なし」。ユニバーサル・ピクチャーズ初のアカデミー作品賞受賞作品が、アメリカ議会図書館によって永久保管されていたオリジナル映像によって再び楽しめる。第一次世界大戦時、情熱に駆られたドイツの若者たちが軍に志願する。ところが西部戦線に送られた彼らは、戦争の過酷な現実を目の当たりにし愛国心を打ち砕かれる。痛烈な戦争批判を込めた不朽の傑作が、美しく蘇った映像で堪能できる。
A young soldier faces profound disillusionment in the soul-destroying horror of World War I.
- 監督
- Lewis Milestone
- 出演
- Louis Wolheim, Lew Ayres, John Wray, Arnold Lucy
REVIEW from 「文芸ジャンキーパラダイス」
1929年にドイツの作家レマルクが発表した同名小説を、翌年映画化した反戦映画の原点。第1次世界大戦に出征したドイツ兵の若者ポールが主人公だ。愛国心を生徒に説き、戦場へ駆り立てる老教師の言葉に乗せられた彼は最前線へ向かう。補給が途絶え飢餓状態の中、戦友が砲撃の恐怖から発狂する姿や、多くの無残な死に直面し、身も心もズタズタになっていく。彼ら最前線の兵士たちは語り合う「一体、なぜ戦争が起きたんだ?」「国が国を侮辱して…」「ドイツの山がフランスの山を侮辱したのか?」「山じゃなくて人間だよ」「俺は侮辱された覚えはないぜ」「誰かが戦争をしたがったんだ」「誰かが得をしている」「皇帝以上の得はないぜ。戦争をすれば歴史に名が残るじゃないか」「将軍たちも」「武器商人には金がたんまり」「…そうだ、こうすりゃいい。まず野原をロープで囲み、囲いの中へ各国の王様や大臣たちを集め、裸にしてケンカをさせる。それで勝敗を決めるんだ!」「イエー」。from : 史上最強の超名作洋画ベスト1000
故郷に帰還した彼は、母校で相変わらず生徒を煽っている教師に対し怒りを爆発させた。この映画は10年後に勃発する第二次世界大戦を止める事は出来なかった。しかし、個人的には憎くもない相手を、生まれた国が違うという理由で殺すことの狂気(ポールは自分が刺し殺した敵兵が持っていた妻子の写真を見て絶句し、嗚咽する)を描いた意味は非常に大きい。行軍する若い兵士たちと、視界の彼方まで続く無数の十字架が重なっていくラストカットが、胸を締め付けた。
題名の意味はラストシーンで明かされる。ポールに待ち受けている運命については映画を見てほしい。
※レマルクの国ドイツでは、上映をめぐって左派と右派が衝突し上映禁止になった。
※アカデミー賞(1931)作品賞、監督賞
*本レビューは、「文芸ジャンキーパラダイス」管理人様の許可を得て転載しております。