ボンベイ BOMBAY / 1995 / India
STORY
2つの宗教の対立によって暴動の起きている街ボンベイ。そこを舞台に、互いに反目する宗派でありながらも愛を貫こうとする男女の姿を、歌や踊りを交えながら描く。
A Hindu man and a Muslim woman fall in love in a small village and move to Mumbai, where the have two children. However, growing religious tensions and erupting riots threaten to tear the family apart.
- 監督
- Mani Ratnam
- 出演
- Arvind Swamy, Manisha Koirala, Tinnu Anand, Akash Khurana
REVIEW from 「文芸ジャンキーパラダイス」
「ヒンズーでもムスリムでもない!俺はインド人だ!」from : 史上最強の超名作洋画ベスト1000
主人公が暴動のさなかに叫ぶこのセリフは、映画史に残る悲痛な言葉だった…!
実際にインドで起きたヒンズー教徒とイスラム教徒との血で血を洗う暴動を背景に、宗派を超えて愛し合う2人を描いたインド版ロミオとジュリエット。社会派作品でありながら歌や踊りの娯楽的要素も含んでいるという、近代インド映画の金字塔。
映画の前半は、由緒あるヒンズー教徒の一族に生まれた主人公が、命を賭してイスラム教徒の女性に愛を捧げる物語。双子が生まれ、夫婦は子供たちにヒンズーとイスラムの混ざった名前(姓がヒンズー、名がイスラム)をつける。すでに自分はこの時点でTOP50に入ると確信した。後半は、1992~3年にボンベイで実際に起こった両派の宗教大暴動に、この一家が巻き込まれていく物語だ。この暴動シーンは震えあがるほど生々しく、自分は尋常ではない緊迫感に包まれた。
インド映画の定石通りミュージカル・パートが挿入されるが、その歌詞は仰天モノ。『ブッダが生まれた国にブッダは不在』とか『武力なしで独立を成し遂げた国(ガンジーのこと)なのに、今また刀を手に混乱を巻き起こす』など強烈なメッセージ性があった。極めつけは『頬をつたう涙はどれも同じ色、宗教という名の狂気は捨てよう、それぞれの誇りを重ね、高い山にしよう』だ。なんと、宗教を“狂気”と歌い上げるのだ!
殺し合いになるほど信仰心の厚いインドで、本作を撮るのはすごく勇気のいることだったと思う。最大限の賛辞をスタッフ一同に贈りたい(主人公夫婦の親同士が、宗教感情で対立しても孫の前で簡単にメロメロになるのがコミカルで可笑しかった)。映画が終わってみれば、何とTOP10入りの大傑作!万難を排して観るべし!
*本レビューは、「文芸ジャンキーパラダイス」管理人様の許可を得て転載しております。