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善き人のためのソナタ DAS LEBEN DER ANDEREN / 2006 / Germany

善き人のためのソナタ

STORY

1984年、東西冷戦下のベルリン。
壁の向こうで、何が起こっていたのか?
反体制を取り締まる国家保安局""シュタージ""絶対的な権力の下で、プライベートは存在しない。
ようやく明かされた""監視国家""の真実。
from:amazon

In 1984 East Berlin, an agent of the secret police, conducting surveillance on a writer and his lover, finds himself becoming increasingly absorbed by their lives.

監督
Florian Henckel von Donnersmarck
出演
Martina Gedeck, Ulrich Mühe, Sebastian Koch, Ulrich Tukur

IMDb Rating:

8.5

REVIEW from 「文芸ジャンキーパラダイス」

アカデミー外国語映画賞に輝いたドイツ映画。『フィツカラルド』『アギーレ』を世に送った巨匠ヘルツォーク監督が「ドイツ映画史上、最も素晴らしい作品」と絶賛し、僕は公開を楽しみしていた。実際、期待をはるかに上回る内容だった!舞台は1984年、ベルリンの壁崩壊の5年前の東ドイツ。政府は密告社会を築いて国民を24時間監視し、反体制の疑いがある市民を盗聴、証拠を抑えては投獄していた。主人公は国家保安省(秘密警察)の局員ヴィースラー。冒頭の尋問シーンがリアルで、主人公いわく「被疑者がシロなら尋問が長びくと“家に帰せ”と怒り出す。クロなら心に負い目があるので強気になれずメソメソし始める。また、本当にアリバイがあるなら色んな言葉で状況を説明しようとするが、嘘のアリバイなら同じ単語の繰り返しになる。追い詰められるほど変化のない自作の筋書きにすがる」。主人公は盗聴のエキスパートであると同時に心理学のプロ。僕は“こいつの前では絶対に嘘がつけない”としょっぱなからビビった。このスゴ腕の主人公が、反体制の劇作家&恋人の女優を盗聴し始めて、2人から少しずつ影響を受けていく。逮捕の証拠を集めているハズなのに、劇作家の切実な“自由を求める叫び”に胸を打たれてしまう。しかし、思想犯に少しでも共鳴することは、秘密警察である彼にとって銃殺モノの罪だった。やがて民主化を求める劇作家に逮捕の手が迫る。国家権力の動きを知る主人公はどんな行動をとるのか--あとは映画を観て下さい!映画の前半にある、盗聴マイクから聞こえるピアノソナタに聴き入るシーンは本当に美しいカットで、映画史に残る名場面と思いマス。この作品を観て実感したのは言論の自由の大切さ。僕はサイトへ自由に政府批判の意見を書いてるけど、この行為が罰せられる時代が日本にもあったし、現在でも世界各地の独裁国家が国民に弾圧を加えている。僕らは大きな犠牲を払って手に入れた言論の自由を、絶対に死守せねばと痛感した。※この映画はラブストーリーとしても優れた傑作デス!たぶん07年の僕のベストは(まだあと9ヶ月あるけど)本作か『リトル・ミス・サンシャイン』のどちらかに決まりそう。
※89年の夏、22歳の僕はゲーテとワーグナーの墓参の為に東ドイツを訪れた。当時はビザが必要で、鉄道の切符は政府指定の高いホテルとセットだったり、移動するのも大変だった。その3ヶ月後にベルリンの壁が崩壊したのを英国で聞き、事態の急変に驚いた。そしてあの壁を越えられずに射殺された市民の墓地を思い出し、これでもう、壁際の墓地に新しい墓が増えることはないと思い黙祷した。
※ヴィースラーを演じウルリッヒ・ミューエさんが本作の撮影翌年の07年7月に胃癌のため54歳で他界。冥福を祈ります。
※アカデミー賞(2007)外国語映画賞
from : 史上最強の超名作洋画ベスト1000
*本レビューは、「文芸ジャンキーパラダイス」管理人様の許可を得て転載しております。

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