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ザ・インタープリター THE INTERPRETER / 2005 / UK, France, Germany, USA

ザ・インタープリター

STORY

【アカデミー賞受賞キャスト&スタッフ結集で放つ衝撃のサスペンス・アクション大作!】≪過去を失った国連通訳(インタープリター)妻を失ったシークレット・サービス≫≪言葉の力を信じる女と銃の力を信じる男。国家を揺るがす連続殺人は、その夜からはじまった---!!≫国連通訳として働くシルヴィア。ある夜、通訳ブースに立ち寄った彼女がヘッドフォン越しに洩れ聴いたのは、彼女にしかわからない「クー語」だった。 「大統領は生きてこの国を出られない」…。正体不明の暗殺者に追われる身となったシルヴィア。シークレット・サービスのケラーは、直ちに監視体制を敷き彼女の身辺警護を開始する。だが、集まった情報は驚愕すべきものだった。 シルヴィアはかつてアフリカの小国で反独裁運動に関わっていた──!彼女は何者なのか? 暗殺はいつなのか? 謎は連続殺人を呼び、国連本部に血の雨が降る時は刻一刻と近づいていた…!
from:itunes

Political intrigue and deception unfold inside the United Nations, where a U.S. Secret Service agent is assigned to investigate an interpreter who overhears an assassination plot.

監督
Sydney Pollack
出演
Nicole Kidman, Sean Penn, Catherine Keener, Jesper Christensen

IMDb Rating:

6.4

REVIEW from 「文芸ジャンキーパラダイス」

憎しみの連鎖を断ち切るために、どうすれば敵に「復讐したい気持ち」を克服する事が出来るのか。
主人公は国連本部で通訳をしているシルヴィア(ニコール・キッドマン)と、シークレット・サービスの捜査官ケラー(ショーン・ペン)。シルヴィアは「銃よりも即効性はないが対話こそが平和への道」と言葉の力(外交)で世界を平和に出来ると信じる女性であり、一方のケラーは捜査官として人間の暴力性・闇の部分と背中合わせに生きている男で、いわば2人は川の対岸にいる。ある時シルヴィアは偶然に、アフリカ・マトボ(仮想国)の独裁者ズワーニ大統領を国連総会中に暗殺する計画を知り、口封じの為に命を狙われるようになる。彼女の警護を担当したのがケラーだった。
※コミュニケーションの失敗と誤解が紛争を生むことを考えると、シルヴィアが「“通訳”で世界平和に貢献する」と熱く語る姿はとても説得力がある。

シルヴィアとケラーには最愛の人を亡くすという共通点があった。シルヴィアはNY在住の白人だが、実はアフリカ生まれ。そして内戦中に地雷で両親と妹を失っている。ケラーの方は妻が若い男に走り、その男が自動車事故を起こして2人とも死んでしまった。妻の死を受け入れられないケラーに、シルヴィアはアフリカの部族に伝わる慣習の話をする。--大切な人を失った者は「復讐」するのか「許す」のか選ばねばならない。犯罪者は事件の1年目に手を縛られ川に投げ込まれる。もし被害者の家族や恋人が憎む相手を溺死させ復讐すれば、その人は一生喪に服さねばならないし、死ぬまで故人の名を口に出してはいけない(過去に出来ない)。しかし相手の命を救えば(失った命の代わりに別の命を救えば)、悲しみから解放され、死者の冥福を祈って新しい一歩を踏み出すことができ、初めて故人の名を口にすることが許されるという。--これは「復讐」という不毛な憎しみの連鎖を断ち切る方法を説いており、この思想が作品の根本を貫いている。

ポラック監督は過去にアカデミー監督賞を受賞(ノミネートは3回)している社会派映画の巨匠。今回は国連を舞台にした暗殺計画を題材にしているけど、映画から伝わってくるメッセージは米国の進める“対テロ戦争”への疑問の声だ。監督は言う「テーマは言葉VS銃。これは砲弾の代わりに言葉を使う物語なのだ」と。正面から対テロ戦争を批判する映画を作れば全米公開が見送られてしまう。反戦メッセージは多くの人に届かなければ意味がないので娯楽サスペンスという形をとったという。この作品が映画史上初めて国連本部ビルでのロケが許可されたのは、監督がアナン事務総長に直接製作意図を語ったからだ(アナンもグッジョブ!)。
ポラックは独裁者ズワーニの言動からも世界情勢を風刺している。ズワーニはかつて祖国を民主化させた英雄だったが、長く政権に座すことで恐怖の圧制者に変貌し、多くの国民を虐殺している。彼は自分と意見を異にする者を反政府過激派とみなして片っ端から処刑し、反政府運動を全てテロ活動と認定し弾圧した。対外的には虐殺を「対テロ戦争」だと主張、「自由と安全を守る戦い」だと訴えているのだ(国際社会は対テロ戦争という名目に弱い)。このように、極めて今日的なテーマを描いているんだ。

主演のニコール・キッドマンとショーン・ペンは、2人とも近年アカデミー賞を受賞してノリにノッてる旬の俳優だ。膨大な数の出演オファーが殺到しており、台本を読んで納得した仕事しか引き受けない。だからこの2人が出ているというだけで、既に作品の質は保証されている。
僕はニコールと同じ'67年生まれというのもあり勝手に親近感を持っている。彼女が『めぐりあう時間たち』で主演女優賞に輝いた時のスピーチは拍手喝采だった--「対テロ戦争中にアカデミー賞授賞式を開くことへの疑問の声も聞かれますが、アートは大切です(“アート・イズ・インポータント”)。この仕事に信念を持っているし、それに敬意を表したい」。
そしてショーン・ペン。彼は今のハリウッドで一番権力に逆らっている俳優だ。ブッシュ政権を「極悪きわまる腐敗政権」と糾弾し、イラク戦争前には自らバグダッドに入って戦争回避を訴えた(ここまでする俳優を他に知らない)。昨年の主演男優賞受賞(『ミスティック・リバー』)時のスピーチはこうだった「大量破壊兵器が存在しなかった様に演技にも優劣は存在しません」。ポラック、ニコール、ショーン。最強の布陣で作られた映画が本作だ。

※この映画は名前を覚える登場人物が非常に多いので、かなりの集中力を要する。ボーッとしてたらアッという間に物語を追えなくなる。黒人俳優の顔が似ているので気合を入れて見るように!
※ズワー二が理想を追っていた頃の著書の一文 「圧制者の銃声が鳴り響く中でも聞こえる音がある。人間の囁き声はどんな音とも違う。それは他の音に打ち勝つ力を持っていた。叫び声ではなく、たとえかすかな声でも、真実を語る時は銃声に勝るのだ」がグッときた。昔は良い奴だったのに…。
※キス・シーンのないハリウッド映画を見たのはこれが初めてかも。
※国連の近くに桜並木?が映ってて、満開で美しかった。
※ニコール・キッドマンは年を経てますます美しくなってきた。離婚して若い娘に走ったトム・クルーズは大馬鹿者。
※こういう映画が作られるから、僕は米英の良心を信じてしまう。ブッシュやブレアが米英そのものではないって。
from : 史上最強の超名作洋画ベスト1000
*本レビューは、「文芸ジャンキーパラダイス」管理人様の許可を得て転載しております。

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