パラダイス・ナウ PARADISE NOW / 2005 / Palestine, France, Germany, Netherlands, Israel
STORY
ゴールデングローブ賞受賞&ベルリン国際映画祭3部門受賞作品!!自爆攻撃へ向かう、二人の若者の48時間。実際の銃撃戦のさなか撮影された全身震撼のエンターテインメント作品!!!時折ロケット爆弾が飛んでくるイスラエル占領地のヨルダン川西岸地区。自爆攻撃に選ばれた幼なじみの二人の若者、サイード(カイス・ネシフ)とハーレド(アリ・スリマン)。ハーレドは殉教することによって英雄となることを喜び、サイードは密告者の息子という汚名を晴らす為、静かにそれを受け入れた。しかし、サイードにはお互いに心惹かれあう女性と自爆攻撃を決して喜ばない母がいた。やがて決行の日、二人は髪とひげを剃り、腹には外すと爆発する爆弾が巻かれた。決行の場所へと向かう二人。しかしその途中、思わぬアクシデントが二人を離れ離れにしてしまう・・・。
Two childhood friends are recruited for a suicide bombing in Tel Aviv.
- 監督
- Hany Abu-Assad
- 出演
- Lubna Azabal, Hamza Abu-Aiaash, Kais Nashif, Lutuf Nouasser
REVIEW from 「文芸ジャンキーパラダイス」
腹に爆薬を巻き付け、自爆テロに向かう2人のパレスチナ人青年を描く。舞台はイスラエル軍に包囲された西岸の町ナブルス。パレスチナ問題をパレスチナ人視点で描いた数少ない作品。ゴールデン・グローブ賞の最優秀外国語作品賞に輝いている。from : 史上最強の超名作洋画ベスト1000
僕は一般市民を標的とした無差別テロには絶対に反対だ。それだからこそ、なぜ自爆テロの志願者がこんなにも多いのか、その動機を以前から知りたいと思っていた。この映画では普通の若者が自爆テロの実行役に選ばれ、両親には秘密にしたまま組織のビデオカメラの前で遺言を吹き込み、イスラエル人が利用する路線バスに乗り込む過程を追っている。
見終えた今、テロには断固反対という立場は変わらないけれど、パレスチナの若者が直面している八方塞がりの絶望感、心の尊厳を現在進行形で踏みにじるイスラエルへの怒り、天国への熱烈な憧れ、そういうことから志願者が絶えないという現状が理解できた。
劇中では、テロ犯に“そんなことをするな”というアラブ人も出てくるし、命の重みがマヒしているような過激派幹部の描写(メシを食いながら“片手間に”テロを指導)もあり、単純に過激派を支持する作品でないことを念押ししておく。
以下、爆弾テロ反対派との会話(論争)を紹介。
「教えて、なぜこんなことを!」
「分かるだろ。平等に生きられなくとも平等に死ぬことは出来る」
「平等の為に死ぬことが出来るなら、平等に生きる為の努力をするべきじゃないの」
「あんたのいう“人権”でか?」
「それも一つの可能性よ。とにかくイスラエル側に殺す理由を与えないの」
「無邪気だな。自由は戦って手に入れる。不正がある限り自分を犠牲にする者はいるんだ」
「犠牲なんかじゃない、ただの復讐よ!人殺しは皆一緒。人殺しに犠牲者も占領者も違いはないわ」
「奴らには飛行機があって空爆してくる。俺たちは何もない、自爆して対抗するしか方法がないんだ」
「見当違いよ。何をしてもイスラエル軍の方が強いのよ、武力では勝てないのよ」
「死だけは常に平等だ。俺たちは天国に行ける」
「いい加減にしたら!?天国なんて頭の中にしかないわ!」
「地獄で生き続けて行くよりも、想像上の天国の方がマシだ。占領下は死んだも同然。それなら別の苦しみを選ぶ」
「残された私たちはどうなるの?こんな作戦で勝利すると思う?あなたの行動が私たちを破壊するのよ。そしてイスラエルに殺す理由を与えることになるの」
「理由がなくなればどうなるって言うんだ?」
「殺さない。この戦争を理論的な戦いに持って行くことはできるわ」
「イスラエルの方にモラルがないんだ、そんな理論が通じるはずない」
※ゴールデン・グローブ(2006)最優秀外国語作品賞/ベルリン国際映画祭(2005)青い天使賞/ヨーロッパ映画賞(2005)脚本賞。
*本レビューは、「文芸ジャンキーパラダイス」管理人様の許可を得て転載しております。